派遣ライフ☆企画課日誌

派遣ですが職場愛が深すぎる私の刺激的な日常を、独自の視点でつづっています!

結論:無駄な仕事はあっても、無意味な仕事はない!

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コロナ禍にあって、今年に限っては5月の連休は”ゴールデンウィーク”ではなく、”ステイホーム週間”などと呼ばれ、観光旅行やイベントもないため、連休明けのお土産話、日焼け自慢、渋滞自慢、家庭サービス自慢、お土産実物など、なにもなく、静かに日常が始まっただけだった。

例年と違うのは、この時期になっても、全員がマスク着用でいること。でも、それにももう慣れてしまった。

 

連休が明けたとはいえ、社員の1/3はテレワーク、有休消化で不在のため、オフィスは閑散としている。3密回避のため、会議予定もキャンセルされているので、管理職の方々もけっこう有休消化に励んでいる人が多い。

 

そんな中、私たち派遣スタッフにもついにテレワークが認められた。

テレワークといっても、私たちはPC機器の持ち帰りは許可されておらず、セキュリティ確保が難しいことから自宅から会社用クラウドへのアクセスも許可されず、結局は実質ただの自宅待機。普通のお休みと違うのは、外出せず自宅で待機していなくてはならない、ということ。とはいえ、監視も報告義務もないので、お給料もらってお休みしてるのと同じ。

 

まあ、こんな時ですから、どこかへ遊びにいってやろうとも思いません。まじめにひたすらステイホームに専念します。

 

この措置は一時的なもので、いつまでも続くというわけではなさそう。

そりゃそうよね、これじゃ派遣雇ってる意味ないもんね。出社して”なんぼ”の派遣社員ですから。”派遣切り”、”契約解除”…私たちをびびらせる不穏なワードが世間を飛び交う中、太っ腹な会社方針のおかげで、職もお給料も現状維持で、ありがたく思います。

 

週に何日かは出社するけど、出勤日には仕事がたんまりたまっていた。自分の仕事プラス社員さんからの依頼業務が、ふせんに書き込まれて、所狭しとデスクいっぱいに貼られていたりする。

終業時間までに全部できるのか…?不安な気持ちもある。

仕事時間減ってるんだから、同じ仕事量できないんじゃない?

今までの2~3日分を1日でやれってことだもんね?

 

でも、断りたくないじゃないですか。これは私の性分なんだけど。

なるべく断りたくない。なんとかミッション完了させていきたい。

そうしないと、寝る前に頭の中に浮かんできて、できなかった原因と対策を延々考えてしまう→眠れない、みたいなことになるし。

 

だから、スピードあげて、効率重視でやるようにした。

メールちょこちょこ確認してたけど、それはやめて時間決めてまとめてチェック。自分に関係のあるやつかどうかだけ確認する、とか。

電話鳴ってても、出られないときは無理して出ない、とか。

あと、ほんとに出来そうにないものは、期限を交渉して先延ばしにしてもらう、とか。

こんな時だからか、それでダメって言う人はいなかった。出来るときでいいから、って言われて。でも、次回は来週の半ばまで来ないからけっこう先になりますけど、というやりとりなどして。

 

そんなこんなで、仕事としては調整はしたけど、お断りはせずに、なんとかこなせていけた。ただ、昼休み、終業時、ものすごいくたくたになる。消耗する。けっこう動く仕事もあるからね。上の階行くのエレベーター待ってられないから階段で行き来したり、倉庫に資料取りに行くだけでも、倉庫のカギは〇〇部の主任さんが持ってる、倉庫は〇〇階にある、みたいなことで移動距離が多い…。合間合間におつかいのような仕事も頼まれるから、可能な限り小走りで移動。

 

ある昼休み、休憩室で、例によってくたびれて、お弁当ひろげる気力もなく、とりあえず水分補給だけしてぼーっとしてた時のこと。普段外に食べにいく何人かのグループがコンビニで買ったお弁当を持ってやってきて、同じ場所で食べることになった。

そして、そのうちの一人が言った。

「なんか、忙しそうだね。」

 

彼女は1年ほど前に入ってきた派遣のT子で、わりと私と持ち場が近く、お互いの仕事ぶりはなんとなくわかる。

 

「うん。でも、みんな忙しいでしょ?」

と、笑って答えたら、

 

「えー?どうしてー?」

って、何人かが声を合わせて聞いてきた。

 

「だって、自宅待機してる間の仕事たまってるから、やってもやっても終わらないよー?」

と私はわざと泣きそうな声を出して訴えかけた。

だけど、やっぱり反応は微妙で、クスクス笑う人と、大丈夫?みたいな顔する人の2種類になっているのが見て取れた。

 

私そんなにおかしいこと言ってるのかな?みんな同じ感じだろうと思ってたんだけど。

 

「みんなは忙しくないの?仕事たまってない?」

私は問いかけてみた。忙しくないというなら、逆にその理由を知りたいし。

 

「忙しくはないよ。”無駄な仕事”はやらないから。」

クスクス笑うグループの一人が言った。

はて、”無駄な仕事”ってなんだろう。それはまだわからなかったけど、なんでクスクス笑っているのかはだいたいわかった。要はただ単に私が要領が悪いだけ、と言いたいのだろう。

 

彼女たちの理論はわかる。

時給生活の私たちにとって、成果をあげるとか、結果を出すとか、そんなことは何の意味もなさない。給料もあがらないし、ボーナス査定も関係ないし、左遷もない。

契約期間、無断欠勤などせず、普通に出社さえしていればクビになることはまずない。

時間通りに出社して、時間になったら帰る。

ならば、勤務時間内をいかにラクして過ごすか、そう考えるのは当然のこと。

 

この考え方が正しいとか、正しくないとか、私にはわからない。

ある意味そういうものかもしれない、と思うこともあるし、こう思ってると思われているのかな、と思うこともある。

理解できなくはない。

 

でも、私はそんな感覚はまだ自分の中に持っていない。悪いけど。

仕事は一生懸命やるもので、ベストパフォーマンスで捧げるもの。

(もちろん時給は変わらないけど。)

それは社員だろうと、派遣社員だろうと同じ。

 

これは、ただかっこいいこと言いたいってわけじゃなくて、

本来怠け者の自分との闘いでもあるし、いい結果がでれば自分も満足するし、”ありがとう”なんて言ってもらえなくても、頼まれた仕事をやり遂げた、それだけで満足できる。おいしいお酒が飲めて、よく眠れるので、全然いい。

 

そんな私の考えに興味を持つ人はいなさそうだったから言うこともなかった。たぶん彼女たちの目には私は、社員の点数を稼ごうとしてる人、に見えてるんだろう。

みんなはお弁当を食べだし、話題は変わって。最近営業部に配属されてきたイケメン新入社員の話を始めた。

そんな中、T子だけは、私を心配してくれているようだった。

なんでも仕事受けちゃってない?無理しない方がいいよ、と。

気遣ってくれるのはありがたい、素直にお礼を言った。

 

するとその時、古株のY子が社食から戻ってきた。マイボトルだけ持って、みんなとお茶しに来たのだ。Y子は古株だけど、最近まわりの社員さんが編成替えでがらっと変わってしまったため、なじみの方々がいなくなり、古株の特権を発揮できないでいるらしい。

 

T子がY子に私のことを話した。

「忙しいんだって。大変よねぇ。」

Y子はゆっくり私に視線をうつし、しばらく思案するような表情のまま固まっていた。

Y子は普段は言葉少なだが、いったんスイッチが入ると止まらないタイプ。そして私に対しては必ず学校の先生が生徒に話すように話す。

そして攻撃は始まった、いや、彼女は話しだした。

 

「無駄な仕事をしちゃってるからじゃない?」

彼女の分析によると、私が忙しいのは私が無駄な仕事をしているから、らしい。

また出てきた”無駄な仕事”。

 

彼女の長々とした話からわかったのは、私が忙しい理由は前述のとおりで、とにかく仕事メニューのすべてをこなし、さらに飛び込みの仕事も全部対応してるから、と。

そしてなぜ彼女たちが忙しくないのかといえば、

 1)急な仕事は断っているから

 2)終わらない仕事は中断しているから

 3)しないことにした仕事があるから

集約すると上記の3点のようである。

 

彼女たちの言い分としては、勤務時間が減っているので、1)と2)については、上記のような業務体制になります、と上長に報告しているらしい。だから、新しく仕事が増えることはないし、終わらくてもそのまま帰る(報告だけはちゃんとしていることを願う)。

3)について、どういうことかY子に聞いた。

彼女は本来仕事ができて、物知りで、探求心も旺盛で、PCの新しい操作もすぐ覚えるし、社内の情報に関しても精通している。そのへんは社員さんよりも社員ぽい人である。本人もそれを自覚しているようだけど。

もとい、「しないことにした仕事がある」とはどういうことなのか、そんなこと勝手にできるのか、についてY子に聞いた。すると、彼女は次のようなことを話した。

 

コロナ禍で、社内の会議やイベントスケジュールがいったん白紙になり、彼女の部署は一時的にとても暇になったことがあった。その際、空いた時間で自分の仕事をいろいろ見直してみた。すると、”無駄な仕事”がけっこうあったというのだ。

毎月固定になっている仕事で、前任者から引き継いでやっているものの、何に使用されるのかわからない資料、データの作成、スクラップ整理、記事検索、データベースの更新、帳票のファイリング。

 

これらを一時的にストップしてみた。

1ヶ月たった。

 

誰も何も言ってこなかった。誰も困っている様子はなかった。

 

それで、これは”無駄な仕事”だったと判明した。

だからもう私はやらない。意味がないから。誰も見てないし、必要としていない。

ゴミみたいな作業をやる必要はない。

 

何か社員が言ってきたら、それらよりもっとクリエイティブな仕事を提案してやらせてもらうつもり。だからそれまでは、会社に出勤はするけど、ゆっくりさせてもらう。

 

以上がY子のトーク内容。

 

どなたか共感される方はいるだろうか。

 

私は、思考回路が違うのか、まったく共感できず、目が???になっているのをY子に気づかれないようにする方に必死だった。

 

彼女が派遣社員ではなく、嘱託のベテラン社員さんだったなら、こういう意見もありかなとは思うけど。そういえばY子が個人的に、なんというかスポンサー契約を結んでいる元上長の男性は定年間際のベテランさんだった。その方に見込まれて、社員並みのずいぶん高度なお仕事をまかされたらしい。彼女の誇りだ。それで彼女の意識も一線を越え、社員さんサイドに行ってしまったのか?

 

私たちは最初から派遣社員だったのではない。

ほとんどの人が、社員としてのキャリアを積んだうえで派遣社員となっている。

でも、派遣社員として働くということは、スキルはキープしても、社員であった頃の意識は一回すべてクリアにしていかないといけない。そうでないと派遣社員として生きていけない、と私は思っている。少なくとも、その体(てい)で行かないと、消せない社員経験や意識は自分の足かせになる。

どんな有名企業にいようと、大手でキャリアを積もうと、派遣社員として働く現場では、社員の目で意見を求められることはまずない。そんなことは求められていない。

 

そんなことしようものなら、立場をわきまえろ、と痛い目にあうのである。

決められている仕事を勝手にやめることも同じで、派遣社員として、あってはいけない事だと思う。ただ、彼女の今回の話を聞いても、私が特に口を出すことはない。放っておく。これはY子とY子の職場の間の話だからである。Y子の仕事をちゃんと管理できていない社員にも責任があると思えるし。そんなこと言わせちゃいかんのよ、Y子さんにね。

 

”無駄な仕事”を排除し、晴れて暇になったY子。

さて、そもそも派遣社員の仕事を決めるのは誰だろうか?

私はその時、私たちの仕事を決めるのは社員(会社)であり、私たちは勝手にやめたり、拒むことはできない、と思った。

 

しかし、私は少し間違っていたようだ。

私たちの仕事を決めるのが社員なら、社員さんが言うことはなんでも服従!になってしまう。派遣にはなんでもやらせてよし!になってしまう。

そうではなく、私たちの仕事は”契約”によって決められているのだ。

あらかじめ決められた”契約”の内容に沿った仕事および付随業務を、ルール通りにやっていく。

”契約”にない仕事はしないし、してはいけない。

追加の仕事があるときは”契約”に即しているか検討し、協議の上双方合意ならやってもいいだろう。一方的に、これをやれ!とか、致しません!とか、そういう関係ではない。

 

とはいえ、全ての業務、細かいことまですべて”契約”に記載することはできない。だから私たち(派遣社員)は社員(会社)さんとの信頼関係が大事であり、常日頃の仕事や行動、コミュニケーションで信頼を築き上げていくことが重要だと思っている。

派遣としての時給アップや延命(契約更新)のためではなく、自分自身が納得のいく仕事をするためである。

 

Y子とはその後あまり話す機会がなく、あのやめてしまったという仕事がどうなったか、わからないままである。彼女の職場の人とうまくやっているのかどうかもわからない。

そういえば、少し前、見慣れない社員数名の方がきて、シャーペンの芯の予備があったら分けてほしいとか、バイク便の手配方法を教えてほしいとか、差し込み印刷ってどうやるのか教えてほしい、などと言われたことがある。

同じ課の社員さんに間に入ってもらい許可を得て、全てに対応した。最後にサインをもらう書類の記入で、Y子の部署の方たちだとわかった。その日Y子は出社している。本来ならY子に頼むべき内容だろうが、もしかして、職場の中で”仕事を頼めない派遣さん”、になってしまったのか。

頼んでも嫌な顔されるからもうあの派遣さんには頼みたくない、とか、雑用はやってくれない派遣がいる、などと社員さんが言っているのを聞くことがある。だからって時給は減らないけど、勤務拘束時間から固定の仕事、社員さんからの頼まれ仕事、などがなくなると暇になるけど、”つまらない時間”になってしまうのではないかな、とY子が少し気の毒に思えた。

 

ところで”無駄な仕事”ってなんだろう。本当にそういうものはあるのか。

自分の仕事の範囲で見直してみた。普段考える必要はないけど、何のために使うのか、誰が使っているのか、アクセス履歴、更新履歴など参照してみた。

すると、確かに長期間誰も見ていない資料や、今では仕様が変わっているので必要かどうかわからないデータベースなどけっこうでてきた。

それでもマニュアルどおりに私は逐次更新や編集を行っている。そういう業務指示があるからだ。

 

派遣の管理担当の社員に雑談ついでにちょっと聞いてみた。

「あのデータベースって、今ではもう誰も見てないですよね?必要なんですかね?」

 

その社員は、ああ!ってうなづいてからこう言った。

「誰も見てないでしょ。あることも知らないかも。今はね。」

 

「今は?」

 

「そう、今は誰も見てないけど、数年後に必ず必要になる。システムの更新で不具合が出た際に、前はどうだった?って必ず必要になる。クライアントからの質問に答えるときにも、過去の事例や履歴が必ず必要な時がありますよ。」

 

「そうですよね。必要なことなんですよね。無駄ではなかったんですね~」

 

「仕事に無駄はないですよ。そう思えても、実は大事なことがあります。無駄なことだったらとっくにやめてもらってますよ。…えへへ(笑)、面倒くさいことお願いしちゃっててごめんなさいね!でもいつもきっちりやってくれてて助かります!」

 

その方がなんと答えようと、仕事に対する姿勢をかえるつもりはなかったが、確認がとれたことで正直ホッとする気持ちもあった。

 

正直にもうひとつ言うなら、”無駄な仕事”がひとつだけ存在するのも私は知っている。

私たちのためだ。そして、会社のためでもある。

 

派遣社員に担当させる仕事が常に供給できない場合がある。

だからって遊ばせておくこともできないし、帰ってもらうこともできない。

そんな時のための”保険”のような仕事だ。

空いた時間を埋めるためだけの仕事。

 

今の現場ではわからないが、過去に経験した現場では存在した。

派遣社員にわりふった仕事が終わって、「次、何したらいいでしょうか?」と言われ続けるのも社員さんとしてはつらい。いなきゃ困るけど、なんかあった時にはいてほしいけど、たまたま何もお願いしたい仕事がない時もある。

それで、架空の案件の架空の業務を創り出すのだ。

単調だけど、膨大な量があって、簡単には終わらない作業。

期限はないから、空いてるときにゆっくりやってくれればいい、と言われる。

そんな時は、あ、これは穴埋めの仕事なんだなと察し、けして急いで早く終わらせるようなことはしない。

仕事自体は、何に活用されることもなく”無駄な仕事”だろう。でも、これがなければ職場で派遣社員は居場所を失い、派遣社員がいなくなれば、社員も必要なときに頼める相手がいなくなる。派遣社員を維持しまかなうために、架空の案件を依頼する、これは”無駄な仕事”だが、”無意味な仕事”ではない。私たちと会社側、双方にとって重大な意味があったりする。

一例ですけどね。

 

でも、Y子のように、自分のまかされている仕事の内容を徹底的に分析し始めると、思わぬ”パンドラの箱”を開けてしまうことにもなりかねない。

仕事の無駄を指摘し、効率化につとめた結果、自分の手が空くことが多くなり、せっかく用意してもらってた生命保持のためのギミックが消え、そのうち「一番無駄なのは”派遣社員”なのではないか?」ということになり…。

 

そんな想像をしてしまうのは、私だけなのでしょうかね。

 

【契約満了まであと 493日】